こんにちは。ヒサノアスカ(@AsukaHisano)です。
「外国は実力主義だから学歴はそんなに重要じゃない」「外国では学歴がなくてもいい仕事に就ける」なんて話を聞いたことはありませんか?
たしかに一部の業種や業界ではそのとおりだったりもするようですが、実はこの説が通用するのは基本的に現地で就労許可を持っていて、かつ文字通りの即戦力になる人材に限るケースがほとんどです。
チェコでは大学での専攻と就労許可を得る職種が合致しないことから、20年以上それ一本でやってきたのに「本当にこの仕事できるんですか?」と実に疑い深く聞かれた友人がいます。
何より私自身、日本とチェコの教育システムの違いによって、最終学歴が高卒相当のはずが中卒扱いされてしまい、就労許可を得るためにチェコの高卒認定試験(Maturita)を受けなければならないかも!?という状況に陥りました。
というわけで、今回の記事では私の身に起きた学歴問題をベースに、海外移住において学歴はどれだけ重要なのかを説明します。
基本的なチェコの学校制度
日本では小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年というのが一般的ではないでしょか?
もちろん中学校の後に高等専門学校(高専)に進んだり、大学の代わりに専門学校に進む人もいるので一概には言えませんが、まあ一般的にはこのルートだと思います。
対するチェコは、Základní škola(初等学校・ZŠ )9年、Střední škola(中等学校・SŠ )4年、Vysoká škola(高等学校・VŠ)/Univerzita(大学)4年~というのが基本です。
日本の学校制度と比較するなら、小中学校がZŠ、高校が SŠ に当てはまるわけです。
ちなみに高校はSŠ以外にもギムナジウムもあったりするのですが、その辺りはややこしくなるので今回は詳しく解説はしません。
で、すでにお気づきの方もいると思うのですが、チェコは高校にあたる教育機関が3年制ではなく4年制です。
そしてこの年数の違いにより、高専3年修了中退者であるヒサノは就労許可取得に際して恐ろしく苦労する羽目になりました……
年数足らずで中卒扱いに……
プロフィールでも他の記事でも公開しているように、ヒサノは某国立高専3年修了で中退しています。
日本ではこの年数で一応高校卒業相当と判断されますし、アメリカやデンマーク、チェコも含めて留学の際には特に問題なく高卒相当と認められて入学許可を得られていたので、特に問題だと認識したことはありませんでした。
ところがチェコで就労許可を申請した際、この高専3年修了=高卒相当が通用せず大問題に。
というのも、上で説明したようにチェコでは高校は4年制。
つまり単純に考えると、私はチェコの学校制度に照らし合わせれば高卒には1年足りていないとなるわけです。
「日本では高卒相当の学歴だ」「そもそも高専は高等教育機関だから半分大学みたいなもので一般の高校とはくくりが異なる」などと説明したのですが、まあお役所が柔軟な対応とかしてくれるわけありません。
挙句の果てに、「高校の卒業試験(Maturita)を受けたという記録がないので、3月にその試験を受けてもらうまで就労許可は出せない」という方向にまで話が行きました。
ちなみにこの時8月半ば。もしこの暴論が通っていれば、半年以上仕事もできないままチェコにいて、かつチェコ語で試験を受けなければならなくなるところでした。
最終的に、チェコの日本商工会がチェコ政府と結んでいる「日本人の就労許可取得において学歴は不問とする」という特別な協定を持ち出して半年のビザを取得することができたのですが……本当に、この状況があまりに辛く、9月に入ったころには内定を辞退して日本に帰ることも真剣に考えました。
学歴と職種が一致しないのも問題になるらしい
冒頭でちらりと紹介したように、学歴と職種が大幅に異なっていると、それもそれで面倒の原因になるようです。
アメリカ人の知人から聞いた話ですが、彼がチェコに駐在員として派遣されることになった際のビザ申請では、大学の専攻とその会社で20年以上やってきた仕事の分野が大きく異なっていたため、「あなた、この仕事に必要な知識を大学で取得してないけれど、本当にこの仕事できるの?」と実に疑わし気に尋ねられたそうです。
ちなみにこの知人は「20年以上の経験があるってのに逆になんでできないと思うんだよ!?」と思い出しキレしてました。
現実問題として、大学での専攻と実際に就く仕事が異なる、なんてことは普通に起こりえるわけですが、就労許可を得る際には同系統、もしくは近いものだと望ましいようです。
就労許可を取得するには、たいていの国で学歴チェックが入ります
この学歴チェック、留学であれば比較的緩い(学校がOKを出せば移民局ではほぼチェックされないっぽい?)のですが、現地採用での就労許可となると一気にハードルが上がります。
※駐在派遣の場合は別の緩いルールが適用される可能性大。チェコでも駐在派遣専用のビザ枠があります。
というのも、基本的にどの国でも国民には優先的に自国内で仕事をしてほしいわけで、外国人に就労許可を出すのはよっぽどの理由がある場合のみです。
その理由の一つとして、就労許可を取得する外国人が有能であると証明しなければならず、その証明として学歴が使われます。
こんなことを言うと「学歴偏見だ!」と言われそうですが、ぶっちゃけ中卒程度の学歴しか持たない人が、外国で企業に勤めてまともな実績を残せるなんて普通あんまり思えないですよね。
そんな博打人材を受け入れるくらいなら、能力はそこそこでも自国民にこそそのポジションを与えてやりたいわけですよ。
なので就労許可取得における最低限の条件は高卒、ランクはともかく大卒だと尚良しと、就労する分野と専攻が一致してると更によし、と認識しておきましょう。
永住許可取得に高学歴が必須な国も。
2019年時点でチェコの永住許可取得に学歴は求められてはいませんが、英語圏の多くの国では永住許可申請がポイント制で、学歴、語学力、職能に大きくポイントが割り振られていると聞きます。
つまり高卒でプログラマーとして運よく就労許可を得て移住できたとしても、その後永住許可を取得しようとすると学歴ポイントが足りず申請すらできないという可能性が多々あるわけです。
もちろん移住後にフルタイム・パートタイム・オンライン問わずで大学に通い、学位を取得すれば話は別ですが、はっきり言って簡単なことではありません。
何しろ日本の大学と違い、留年・退学が年次行事な欧米の大学に通うには、外国語でガチで勉強しなければならないため、大学一本でも大変なのに、社会人と大学生の二足の草鞋は真剣にキツイ。
それぐらいなら、またしてもアレな言い方になりますが、卒業しやすい日本の大学で大卒の学歴を入手しておく方がよっぽど楽。
国や大学によっては過去に取得した学位や単位が使えることもあるので、移住後に何らかの理由で大学に入り直すことになった場合でも、単位取得で有利になる可能性もあります。
おわりに
最近では「実力があれば学歴なんて!」と安易に高校や大学を中退してしまう人がいるようですが、それが通用するのは基本的に自国内のみです。
学歴のない日本人が外国で身を立てるには、極端に言ってしまえば、本気で日本人がいなくて困ってる日系企業に採用されるか、ガチの即戦力として初日からバリバリ働けるだけの実力を持っている、もしくは会社を設立してがっぽり稼げるだけのビジネスの才能があるというのでもなければ、そもそもビザを取得する前の就労許可取得で壁にぶち当たってしまう可能性が少なくありません。
私自身、「中途半端な学歴でも生きていけるさ!」と思っていて、実際何とかなって今があるわけですが、これは本当に運が良かったから。
就労許可で右往左往しているときは、自分が学歴を軽んじていたことを本当に悔やんだし、もし 他の国で働くことになったら必要になるかもしれないから、日本で高卒認定試験を受けるべきだろうかと真剣に考え、高認試験や放送大学について調べたりもしました。
一歩間違えればチェコでの就職を諦めて別の国に行っていたかもしれない。そう考えると、ビザ的な意味で海外移住・海外就職における学歴の壁は、日本で言われるものとはまた違う意味合いで恐ろしく高いのだと、実感しました。
もし本気で海外移住や永住許可取得を考えているのなら、安易に学歴を手放す真似はしない方がいい。
せっかくいい機会に恵まれても、続けていれば支障がなかったはずのことで諦めざるを得なくなるのは残念がすぎるし、後悔が一層深まってしまいます。
そういった可能性を減らすためにも、人生を大きく変える判断を下す際には、よくよく考えてくださいね。